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辻井潤一会長(東京大学)の開会の挨拶に引き続き、技術動向調査委員会の活動では井佐原均委員長(通信総研)がTOEICテストを用いた機械翻訳評価の試みなど、市場動向調査委員会では坂本義行委員長(筑波女子大)がベンダーへの市場調査および一般ユーザーへのアンケート調査の結果を、ネットワーク翻訳研究会では横山晶一座長(山形大学)がウェブ上の翻訳システムの評価などについてそれぞれ報告した。
辻井潤一会長 | 井佐原均委員長 | 坂本義之委員長 | 横山昌一座長 |
長尾真京都大学総長 |
最初に機械翻訳研究の第一人者で京都大学総長の長尾真氏が「機械翻訳:過去 現在 未来」と題して日本の機械翻訳研究の歴史を振り返るとともに、翻訳品質の向上、システムの使い易さの向上など技術的な問題にも触れた。
続いて演壇に立ったキヤノン株式会社の畠中伸敏氏は「機械翻訳システムによる知的活動の推進」のなかで、キヤノンでの機械翻訳の取り組みの経過を報告した。辞書の整備とWEB化によるインタフェースの改善を行った結果、導入時には数名程度の利用が現在では350名の利用に拡大した。また、翻訳が主業務の部門よりも事業企画部門やサービス部門での利用が増えている。導入の効果として即時性の要求に対応できるようになったこと、削減されたコストおよび余った時間を創造的な仕事に振り向けることにより知的生産性が向上したことを挙げた。
最後は京都大学教授の石田亨氏が「日中韓馬 異文化コラボレーション実験の経験」という演題で、多国籍チームによる母国語を用いたオープンソースソフトウエアの共同開発の実験について報告した。この実験(Intercultural Collaboration Experiment 2002)には約40名が参加し、機械翻訳搭載掲示板システムのTransBBSおよびWebサイトブラウジングシステムのTransWebを用いて母国語で情報を発信することにより日常的なコミュニケーションと知識の共有をはかった。うまく翻訳されるように文章を修正する「適応精錬」や意味不明な場合に投稿者本人に問い合わせて意図のすり合わせを行う「強調精錬」により、コラボレーション過程で機械翻訳が有用であることを確認したと述べた。
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