この連載ではPC-Transer V10を取り上げて来ましたが、昨年末にV11が発売されました。今回のバージョンアップでは、見た目はほとんど変化がなく大幅な新機能の追加もないようですが、きめの細かい改良が加えられておりこのシリーズの翻訳業務支援ツールとしての完成度が一段と高まったと言えるでしょう。連載の締めくくりとして、V11に新たに追加された機能を紹介します。 | |
小室誠一 バベルMT研究会 |
対訳エディタにウインドウの分割機能が追加され、さらに使い勝手が良くなりました。大きなファイルを翻訳するときに、前の方でどのように訳したか参照しながら訳せるというのは結構便利です。ウインドウの分割はメニューにないので最初は戸惑うかもしれません。下部のステータスバーと作業エリアの境目にマウスカーソルを合わせるとポインタが上下矢印の形になるのでそのまま上の方へドラッグします[図1]。
図1:対訳ウインドウを分割する
「ファイル」メニュー→「開く」
PC-Transerで直接開くことのできるファイル形式にRTFファイルが追加されました。RTFとはRich Text Formatの略で、ワープロソフトでのレイアウト情報の互換性を保てるようにしたファイル形式で、Microsoft社が開発したものです。例えば、一太郎で作成した文書をRTF形式で保存すればPC-Transerに直接読み込むことができます。また、RTFファイルをWordで開けばOffice連携機能によりレイアウトを保持したまま翻訳することができます。
V11ではOffice連携機能が改良されています。Wordの連携機能を見てみると、従来のようにレイアウトの種類ごとに原文のセンテンスを選択してから翻訳ボタンをクリックし、さらに訳文を貼り付けるという手間がいらなくなりました。全文翻訳と指定範囲翻訳の2つのボタンが用意されています。従来のように範囲を指定して翻訳することもできますが、Word文書を開いて全文翻訳ボタンをクリックするだけで、WEBブラウザ連携のようにレイアウトが保持されたまま翻訳結果が別ウインドウに表示されます(「新規ウインドウに表示する」に設定した場合)。翻訳が完了すると自動的に原文のウインドウと訳文のウインドウが左右に整列されるので、すぐに編集作業に入ることができます[図2]。
図2:Word連携機能で翻訳
「翻訳」メニュー→「翻訳メモリ」
今回のバージョンアップで最も強化されたのが翻訳メモリ機能です。検索エンジンを新しくしたということで、かなりスピードアップした感じがします。これは、マッチ率を極端に低く設定して類似文検索をするとはっきりわかります。
新しく追加された機能としては「キーワード検索」があります。検索したい語句を選択しておいて「検索」ボタンをクリックすると、その語句を含む対訳文が表示されます。翻訳メモリが、いわゆるコンコーダンスとして利用できるようになったということです。
また「整列」機能は、対訳エディタと翻訳メモリの画面をピタッとくっつけるもので、「整列」ボタンをクリックすると、対訳エディタの幅に合わせて翻訳メモリ画面が調整されます[図3]。
図3:対訳ウインドウと翻訳メモリ・ウインドウを整列
「ツール」メニュー→「専門辞書自動選択」
付属する専門辞書は製品の種類によって異なりますが、総合版の場合はビジネス・科学技術・医学化学の全25分野、233万語となっています。この連載の辞書機能のところでも解説したように、翻訳する文書に合わせていかに辞書を選択するかが出力結果の品質に大きく影響します。この「専門辞書自動選択」機能を使えば、対訳エディタに読み込んだ原文を解析して、選択すべき専門辞書の候補を挙げてくれます。「オート選択」ボタンをクリックし、解析する文章の範囲と制限時間を指定すると「専門辞書自動選択」画面が開きます(図4)。実際に使用したい辞書にチェックを入れて「OK」ボタンをクリックすると設定されます。いくつものジャンルが重なっている文章を訳すときは大変参考になります。
図4:「専門辞書自動選択」画面
「ツール」メニュー→「設定」
翻訳設定では、「学習辞書を使用する」の項目で「学習しない(読み込み専用)」を選択することができるようになりました。学習辞書は一覧表示ができないので、やたらに学習してしまうと何を学習したかわからなくなっていしまいます。「学習辞書」を使用して訳文を出力したいが、誤って「学習」することを防ぎたいという場合には便利な機能です。
さらに辞書設定でも「読込辞書」ボタンが追加され、複数のユーザ辞書を設定した場合、誤って意図しない辞書に書き込んでしまうのを防ぐことができるようになりました。
「スタート」メニュー→「すべてのプログラム」→「Cross Language」→「PC-Transer V11」→「ツール」→「オプション設定」
「PC-Transerオプション設定」の画面で「自動バックアップ」と「1文ごとの最大翻訳時間」の設定ができます[図5]。
図5:「PC-Transerオプション設定」画面
「自動バックアップ」では、バックアップファイルを作成するかどうか、作成する場合は何分間隔にするかを設定します。初期設定では15分間隔になっています。複数のアプリケーションを起動して作業している場合などフリーズしてしまうことがありますが、この機能を使えば安心です。
「1文ごとの最大翻訳時間」は初期設定では60秒になっていますが、このままにしておくことをお勧めします。というのも、長くしたからといって翻訳の精度があがることはほとんどないからで、それよりも、原文を編集して訳文が素早く出力されるようにした方が良い結果になるでしょう。また、あまり短くすると、文が少しでも複雑になると訳出されない恐れが出てきます。
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