<試用レポート3>

「翻訳ピカイチ バイリンガル Pro」 試用レポート 第1回
第2回→ バベルMT研究会主宰 小室誠一
http://www.babel.co.jp/mtsg/
mt@buc.babel.co.jp
 翻訳ソフトの用途は、大きく分けると一般ユーザ向けの「斜め読み」と翻訳者向けの「下訳作成」の2つになります。
 今回試用した「翻訳ピカイチ バイリンガル Pro」はこのどちらの用途にもバランスよく対応しています。

 これから3回に分けて、訳文作成ツールとしての機能に焦点を合わせてレポートいたします。


●斜め読みツールとして

 最近では、ホームページなどの斜め読みの道具として、翻訳ソフトが一般ユーザにもどんどん使われるようになってきました。
 英文のホームページを表示してクリックするだけで、レイアウトをそのままに高速に日本語化してくれるWebブラウザ連携機能は大変便利です。
 翻訳ピカイチは直接通信方式を採用しており、対応しているブラウザはInternet ExplorerとNetscape Communicatorの2つだけですが、その代わり翻訳スピードが非常に早いのが特徴です。


[図1]同様の翻訳ソフトに比べてフローティング・ボタンは随分シンプルだ。裏を返せば操作が簡単ということになる。一番左のボタンがWEBブラウザ翻訳、二番目が対訳エディタでの翻訳。




 ブラウザ連携機能を使って翻訳すれば、トップページの項目などは十分に意味がわかるので、必要とする情報のあるページへのリンクが簡単に見つかります。


[図2]ワシントンポストのトップページを表示して「翻訳」ボタンをクリックした。あっという間に日本語版ページが出来上がる。十分に意味の分かる訳文だ。
拡大図



 そこで、いざ目的のページの本文を翻訳して読んでみるとなんだか意味がよくわからない、ということがよくあります。翻訳ソフトにもまだまだ限界があるということです。
 それを補うために、各社いろいろな工夫を凝らしています。翻訳ピカイチは便利な対訳エディタを備えています。実は、意味不明な訳文が出力された場合でもほんの少し手を加えてやれば見違えるような訳文になることが多いのですが、残念ながら一般のユーザはほとんど使いこなしていないようです。

●訳文作成支援ツールとして

 さて、英文読解にはそれほど不自由しない翻訳者あるいは翻訳学習者からすれば、わざわざ分かりにくい訳文を苦労して読むより直接英文を読んだ方が早いということになってしまいます。それより辞書引き機能があれば十分だというわけです。
 因みに、翻訳ピカイチのWindows版には、高機能な辞書検索ソフトの「ロボワードV5 研究社 新英和/新和英中辞典」がついています。これだけでもずいぶん重宝します。
 人間が翻訳する場合、ワープロやテキスト・エディタなどで訳文を作成しますが、通常のやりかたでは、ひたすらキーボードを打たなくては訳文ができません。分量が多くなれば大変骨の折れる作業になります。
 ところが翻訳ソフトを使えば、とりあえず訳文を作成してくれます。それもあっという間にです。あとは時間の許す限り、チェック・修正作業を行えばいいのです。
 ただし、翻訳ソフトを使うには、当然のことながら原文がテキスト・データになっていなくてはなりません。
 最近では、翻訳の仕事も原文を電子データで受け取ることが多くなっています。テキスト・ファイル以外にも、MS-WordやExcelなどのファイルに訳文を上書きすることもあります。これなども翻訳ピカイチのOffice2000連携機能を使えば簡単に訳文を貼り付けることができます。


[図3]Office2000連携機能の一例。Word2000に翻訳ボタンが表示されている。翻訳したい文章を範囲選択して翻訳ボタンをクリックし、翻訳が終わったら貼り付けボタンをクリックすると訳文に置き換わる。



 原文が印刷物の場合、同梱の文字認識ソフト(OCR)の「e.Typistエントリー」を使えば楽にテキスト・データに変換できます。(イメージスキャナが必要になりますが)。
 さらには、最近多くなっているホームページ翻訳にも利用できます。HTMLファイルを読み込むと自動的にタグが保護され、そのまま訳文を出力でき、修正も可能です。出来上がった訳文をHTMLで保存すれば、もとのレイアウトで表示できます。


[図4]ワシントンポストのトップページをHTML形式で対訳エディタに読み込み、一次出力したところ。タグが保護されて訳出されており、この画面で訳文を直接修正することができる。ホームページ翻訳のツールとして利用できる。
拡大図


 翻訳方向は英日だけでなく日英にも対応しています。日英の場合は例文検索などの英文作成支援がついています。
 こうしてみると、「翻訳ピカイチ バイリンガル Pro」には翻訳業務に必要な機能が一通りそろっていることがわかります。

●実務で使うために必要な機能

 翻訳実務で使用できるかどうかは「対訳エディタ」と「ユーザ辞書」の機能で決まります。
 どんなにこなれた訳文を出力する翻訳ソフトでもこの2つの機能が十分でなければ訳文作成ツールとしては使えません。
 また、出力された訳文には何らかの修正を入れることが前提になりますので、なまじっかこなれた訳文より、訳語対応がはっきりわかる直訳のほうが利用価値があるといえます。

 次回は、対訳エディタを重点的に見ていきたいと思います。
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