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>>翻訳生産性向上のテクニック

第5回 PC-Transer 翻訳スタジオ2009 試用レポート

 
今回のバージョンアップでは、翻訳業務に役立つ機能がいくつも追加され、文字通り「総合的翻訳支援ツール」に進化しました。
この試用レポートでは、追加された機能を中心に、翻訳支援ツールとしての観点からまとめてみましょう。
 

●使いやすい対訳エディタ

 
PC-Transerの対訳エディタはこれまでも使いやすさで定評がありましたが、今回さらに強化されています。翻訳処理を行う対訳エディタ(翻訳ペイン)は、複数開いてタブで切り替えることができます。PCの性能にもよりますが、英日・日英各最大40の翻訳を同時に行うことができます。ドキュメントをオープンするだけなら英日・日英各100文書まで可能です。実際にこれほど同時処理することはないでしょうが、対訳エディタの高速性・頑強性をはっきり表しています。
 
バージョンアップで心配なのは、便利な機能が追加されたとたんに従来の機能がうまく動かなかったり動きが重くなったりすることがたまにあることですが、対訳エディタの操作性は従来通り軽快です。
 
蛇足ながら説明すると、対訳エディタでは、どの語句がどのように訳出されたのかがすぐに分かる必要がありますが、マウスカーソルを任意の語句に合わせるだけで原文の語句と対応する訳語のフォントが赤くなり一目で対応関係が分かります。ダブルクリックすると反転表示され、ステータスバーに品詞が表示されるので、品詞解析、さらには構文解析が正しく行われているかチェックできます。この状態でさらにクリックするとプルダウンの訳語リストが表示され、任意の訳語をクリックするだけで変更できます。学習機能をオンにしておけば、この操作だけで学習辞書に登録され、次回から最優先で出力されます。品詞の解析が誤っている場合は、訳語ペインに表示される品詞一覧から変更できます。品詞の変更は構文解析をやり直すことになるので、変更と同時に再翻訳され新しい訳文が出力されます。品詞変更も学習することができます。このような調子で、うまく行けばクリックだけで訳文を整えることができる、まさに翻訳作業のための対訳エディタと言えます。
 
また、訳文を後で見直したい、もう少し調査が必要だという場合にはブックマークが便利です。ブックマークに登録すると「ブックマークペイン」のリストをクリックするだけで任意の文にジャンプします。今回のバージョンアップで、最大32種類の色分けしたブックマークを付けることができるようになりました。ユーザーロックと組み合わせれば、大きなファイルを翻訳するときでも楽に管理できるでしょう。

 
訳文の出力をコントロールする機能に「フレーズ指定」があります。機械翻訳は、係り受けが曖昧だと誤解析することがよくあります。そのような場合に、「フレーズ指定」を使って正しい係り受けに直します。今回は、正規表現に対応した検索機能が付加され、同じようなフレーズを一括で指定できるようになりました。

 

●対訳エディタでアラインメント

 
原文と訳文をセンテンス単位で対訳ファイルにする際に利用するのがアラインメントツールで、翻訳メモリを作成するのに不可欠なツールですが、PC-Transer 翻訳スタジオには専用のアラインメントツールは付属していません。その代わり、対訳エディタを使用します。
 
「原文訳文読み込み」で対訳エディタに読み込み、原文と訳文が食い違ったときに片側改行挿入で修正します。今回「片側文結合」が追加され、さらに編集がし易くなっています。
 
翻訳メモリの一括登録も対訳エディタからそのままできる上に、翻訳ロック、ユーザーロック、ブックマークの有無を登録条件とすることができます。
 

●Webブラウザ機能

 
翻訳エディタにWebブラウザ機能が追加され、翻訳中のインターネット検索が効率的にできるようになりました。もちろんInternet Explorerなどを別に起動して検索すれば済むことですが、翻訳エディタのタブで対訳エディタとWebブラウザを切り替えられるのは格段に効率的です。しかも、対訳エディタの原文を範囲選択してWeb検索ボタンをクリックするだけで、指定した検索エンジンで検索できます。検索エンジンや辞書サイトを自分で簡単に追加できるので大変実用的です。
 
翻訳エディタ内のWebブラウザは、通常のWebページも表示できます。Webツールバーの「翻訳」ボタンをクリックすると、表示したページの文字が新規に開いた対訳エディタに貼り付けられ自動的に翻訳されます。この場合、英日、日英を自動判別してくれます。

 
使い方の一例:
(1) 翻訳中に不明な語句が出てきたときに範囲選択して、Googleなどの検索エンジンを指定して「Web検索」ボタンをクリックする。
(2) サイトの一覧が表示されたら参照したいページのリンクをクリックし、Webページを開く。
(3) そのなかで参考となるようなページまたは段落を選択してWebツールバーの「翻訳」ボタンをクリックする。
(4) 英日・日英を判別して、自動的に新しい対訳エディタが開いて翻訳される。
(5) 必要であれば修正し、対訳ファイルとして保存する。
このように簡単な操作で、迅速に大量の情報を対訳で蓄積できます。
 

●用語機能

 
辞書設定の画面で「使用中の辞書」にリストされているユーザー辞書に用語集指定を行うと、「用語表示」と「用語抽出」ができる機能が追加されました。

 
翻訳した後で、対訳エディタの任意の文にカーソルを置いて「用語表示」ボタンをクリックすると、用語集にマッチした原文と訳文の語句に下線が引かれます。緑色の下線は用語集に指定したユーザー辞書にマッチしたもの、赤い下線はユーザー辞書には登録されているが訳文に反映されていないものを表します。

 
「用語抽出」機能を使えば、用語集指定したユーザー辞書から、現在翻訳している文書にマッチした用語だけを抽出できます。しかも用語集は複数の辞書に指定できるので、ユーザー辞書の管理に役立ちます。
 
用語抽出では、単語、訳語の他に、品詞、ユーザー辞書名、本文中の訳語、頻度などがタブ区切り形式で出力されます。アイディア次第でいくらでも活用できそうです。

 

●ネット共有機能

 
翻訳メモリとユーザー辞書のデータを共有して利用できるようになりました。あくまでもLAN環境での共有なので、個人の翻訳者にはそれほどメリットがないかも知れませんが、翻訳会社や企業内で利用すれば業務効率は格段にアップするでしょう。管理者を指定したり、書き込み制限を加えたりできます。
 

●キャプチャ翻訳

 
最近はインターネットのブロードバンド化で、それほどファイル・サイズを気にしなくて良くなったために、Webページで文字が書き込まれた画像が多用されるようになっています。通常のWebブラウザ連携翻訳では画像文字を翻訳することができません。ところが「キャプチャ翻訳」では、画像をOCRで文字認識して翻訳してくれます。FLASHなどの動きのある画像も一旦静止させてキャプチャします。その際、リンクも無効になりますので落ち着いて翻訳したい部分を範囲指定できます。従来はあきらめて文字部分を手入力することが多かっただけに便利になったものです。
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細かく見て行けばまだまだありますが、とりあえず主な点を挙げて見ました。
是非、これらの便利な機能を十分に活用して翻訳作業の効率化に役立てていただきたいと思います。 

【多段階翻訳処理とは】


記事の内容は筆者自身のノウハウに基づいております。記事の内容によって万一損害を被ることがあっても一切責任を負いません。また、この記事の内容に関して発売元の株式会社クロスランゲージへの問い合わせはご遠慮ください。(小室誠一) 

最終更新時間:2008年10月30日 10時28分39秒